再犯を防ぐために・・ 過渡期を迎える刑務所を取材 償いだけでなく社会復帰のための指導も 鹿児島県
2025年3月4日(火) 22:00
刑務所を取り巻く現状をお伝えします。
まずはこちらをご覧ください。
初めて犯罪で検挙された人=初犯者と、複数回を犯罪を犯し検挙された人=再犯者を示したグラフです。
全体の数は減少傾向にあるのに対して、再犯者の数はほとんど変化しておらず、再犯率は2023年時点で47.0%。
つまり半数近くが再び犯罪に手を染めている現状があります。
要因の一つとして考えられているのが社会に戻っても、仕事や居場所がないことです。
受刑者が社会復帰を果たし、再犯率を減らすことを目指して、刑務所のあり方が今、変化しています。
鹿児島刑務所を美川キャスターが取材しました。
美川愛実キャスター
「湧水町の鹿児島刑務所に来ています。今日はこの中でどんな変化が起きているのか、見つめてきます」
鹿児島刑務所。
昭和61年に現在の湧水町に移転した。
2月時点で20歳以上、刑期10年未満の男性受刑者325人が服役している。
罪を犯した人の更生施設としての役割を担うが…
ある受刑者に話を聞くと、
美川キャスター
「服役は何回目ですか」
受刑者
「自分は3回目」
恐喝や詐欺罪で実刑判決を受けたという。
受刑者
「家族がいるが、娘から手紙が来たら、本当にばかなことをしたなと思う」
問題となっているのが再犯率の高さだ。
その対策として刑務所が今、変化の時を迎えているという。
受刑者が木工作業をする工場へ。
美川キャスター
「まさに受刑者が作業をしています。木の香り。ヒノキですか?」
鹿児島刑務所・長谷光誉看守長
「そうですね、独特の香りです」
受刑者は日々、刑務作業を行っている。
木材を加工し製作されるのは家具や雑貨。
丁寧な作りが評判で、買い求める人も多い。
黙々と作業が進むこの工場では、2024年11月から職員の許可を受けずに受刑者ができるようになったことがある。
美川キャスター
「皆さんペアになって、声をかけ合って作業していますね?」
長谷看守長
「共同でしないといけない作業があるので、話をしながら作業している受刑者がいる」
作業中の受刑者同士の会話だ。
それまで作業中は刑務官の許可なしに声を発することはできなかったが、社会に戻った時に違和感なく仕事ができるようにと試行的に運用を開始した。
二人一組で木材を切る作業をする受刑者に話を聞いてみると。
受刑者
「最初変わった当時は悪い事したような気分、しゃべっていいのかな、という気分になったが、いろいろ教えてもらえるので助かっている」
この変化の背景にあるのが、2025年6月から施行される新たな刑罰「拘禁刑」だ。
刑務作業の義務がある懲役刑と、刑務作業の義務がない禁錮刑が一つになる。
償いとして刑務作業をさせるだけでなく、受刑者の更生のために社会に復帰できるよう教育的な指導を行うことが主な目的だ。
鹿児島刑務所・山内博文所長
「(刑務所が)改善更生を図るために必要な作業、必要な指導を行うこととされた。今まで義務的だった作業が必要な作業になるということで、(受刑者の)指導にかける時間が確保されたというイメージを持っていただければいいと思う」
休み時間には受刑者同士がテレビを見ながら談笑し、運動やちょっとした娯楽に触れられるものの、そこはやはり塀で隔離された世界。
明治時代に刑法が制定されて以降、初めて刑罰が見直される2025年、より実社会に即した変化が刑務所には求められているのだ。
刑務作業時の会話のほかには、受刑者への呼びかけを「呼び捨て」から「さん付け」に変え、敷地内の移動は集団で歩調をとり足並みをそろえる行進から、自然に歩けるように運用が改められた。
作業目標や反省を書き込むドリルは、まるで会社の新人研修だ。
美川キャスター
「見方によっては少し緩和されている、緩んでいるのではという視点も出てくると思うが」
鹿児島刑務所・長谷光誉看守長
「緩んでいるのかなというふうに見る一方、社会に近い状態とはどういうことなのかを考えながら、変えていかないといけないのかなと思う」
鹿児島刑務所には九州で唯一、農場区とよばれるエリアがある。
覚醒剤取締法違反で3回目の服役 Aさん
「一番茶に向けて、4月の終わりくらいから収穫があるが、それに向けて今やっているのが楽しい。やりがい感じます」
112ヘクタールにも及ぶ広大な農場区のうち、東京ドーム2個分、約9.2ヘクタールが茶畑だ。
実はこのエリアには、塀がない。
受刑者の約5%、心身に問題がなく、生活態度や作業成績が良好な者だけが茶葉の生産をおこない、資格の訓練を受けることができる。
作業していたAさんは覚醒剤を使用し、現在3回目の服役中だ。
30代で初めて逮捕され、40代でも再び罪を犯したAさん。
その理由をこう語った。
覚醒剤取締法違反で3回目の服役 Aさん
「自分の場合は離婚したことがきっかけで、孤独を感じてやってしまった。社会に出てどうしていくか、生活設計を立てるなり、家族のことを思いながら再犯しないように努力している」
美川キャスター
「ずっと遠くに行くことも不可能ではないが、誘惑は生じないんですか」
Aさん
「ないですね。担当さんには迷惑をかけられないので、担当さんの信頼を取りながら、そういうことをしないように日々努めている」
身近にいる刑務官や、遠くにいる家族。
罰ではなく誰かを裏切りたくないという思いが、更生を支えるのかもしれない。
再犯を防ぐために過渡期を迎える刑務所。
鹿児島刑務所・山内博文所長
「刑務所にいる間は一生懸命、受刑者に対してできることがある。ただ、受刑者が出所する日は来る。犯罪被害者を増やさないためには、再犯を犯して欲しくないという気持ちを持ち、教育的要素も含めた取り組みを続けなければいけない。『再犯を犯していけないんだよ』という、気持ちの種をまいていく作業を忘れずに続けていくことが大事なことかなと思う」
美川キャスター
「刑法が変わり過渡期を迎えている刑務所のあり方。一人でも被害者を増やさないために、罪を償うとは何なのか、模索が続けられています」
まずはこちらをご覧ください。
初めて犯罪で検挙された人=初犯者と、複数回を犯罪を犯し検挙された人=再犯者を示したグラフです。
全体の数は減少傾向にあるのに対して、再犯者の数はほとんど変化しておらず、再犯率は2023年時点で47.0%。
つまり半数近くが再び犯罪に手を染めている現状があります。
要因の一つとして考えられているのが社会に戻っても、仕事や居場所がないことです。
受刑者が社会復帰を果たし、再犯率を減らすことを目指して、刑務所のあり方が今、変化しています。
鹿児島刑務所を美川キャスターが取材しました。
美川愛実キャスター
「湧水町の鹿児島刑務所に来ています。今日はこの中でどんな変化が起きているのか、見つめてきます」
鹿児島刑務所。
昭和61年に現在の湧水町に移転した。
2月時点で20歳以上、刑期10年未満の男性受刑者325人が服役している。
罪を犯した人の更生施設としての役割を担うが…
ある受刑者に話を聞くと、
美川キャスター
「服役は何回目ですか」
受刑者
「自分は3回目」
恐喝や詐欺罪で実刑判決を受けたという。
受刑者
「家族がいるが、娘から手紙が来たら、本当にばかなことをしたなと思う」
問題となっているのが再犯率の高さだ。
その対策として刑務所が今、変化の時を迎えているという。
受刑者が木工作業をする工場へ。
美川キャスター
「まさに受刑者が作業をしています。木の香り。ヒノキですか?」
鹿児島刑務所・長谷光誉看守長
「そうですね、独特の香りです」
受刑者は日々、刑務作業を行っている。
木材を加工し製作されるのは家具や雑貨。
丁寧な作りが評判で、買い求める人も多い。
黙々と作業が進むこの工場では、2024年11月から職員の許可を受けずに受刑者ができるようになったことがある。
美川キャスター
「皆さんペアになって、声をかけ合って作業していますね?」
長谷看守長
「共同でしないといけない作業があるので、話をしながら作業している受刑者がいる」
作業中の受刑者同士の会話だ。
それまで作業中は刑務官の許可なしに声を発することはできなかったが、社会に戻った時に違和感なく仕事ができるようにと試行的に運用を開始した。
二人一組で木材を切る作業をする受刑者に話を聞いてみると。
受刑者
「最初変わった当時は悪い事したような気分、しゃべっていいのかな、という気分になったが、いろいろ教えてもらえるので助かっている」
この変化の背景にあるのが、2025年6月から施行される新たな刑罰「拘禁刑」だ。
刑務作業の義務がある懲役刑と、刑務作業の義務がない禁錮刑が一つになる。
償いとして刑務作業をさせるだけでなく、受刑者の更生のために社会に復帰できるよう教育的な指導を行うことが主な目的だ。
鹿児島刑務所・山内博文所長
「(刑務所が)改善更生を図るために必要な作業、必要な指導を行うこととされた。今まで義務的だった作業が必要な作業になるということで、(受刑者の)指導にかける時間が確保されたというイメージを持っていただければいいと思う」
休み時間には受刑者同士がテレビを見ながら談笑し、運動やちょっとした娯楽に触れられるものの、そこはやはり塀で隔離された世界。
明治時代に刑法が制定されて以降、初めて刑罰が見直される2025年、より実社会に即した変化が刑務所には求められているのだ。
刑務作業時の会話のほかには、受刑者への呼びかけを「呼び捨て」から「さん付け」に変え、敷地内の移動は集団で歩調をとり足並みをそろえる行進から、自然に歩けるように運用が改められた。
作業目標や反省を書き込むドリルは、まるで会社の新人研修だ。
美川キャスター
「見方によっては少し緩和されている、緩んでいるのではという視点も出てくると思うが」
鹿児島刑務所・長谷光誉看守長
「緩んでいるのかなというふうに見る一方、社会に近い状態とはどういうことなのかを考えながら、変えていかないといけないのかなと思う」
鹿児島刑務所には九州で唯一、農場区とよばれるエリアがある。
覚醒剤取締法違反で3回目の服役 Aさん
「一番茶に向けて、4月の終わりくらいから収穫があるが、それに向けて今やっているのが楽しい。やりがい感じます」
112ヘクタールにも及ぶ広大な農場区のうち、東京ドーム2個分、約9.2ヘクタールが茶畑だ。
実はこのエリアには、塀がない。
受刑者の約5%、心身に問題がなく、生活態度や作業成績が良好な者だけが茶葉の生産をおこない、資格の訓練を受けることができる。
作業していたAさんは覚醒剤を使用し、現在3回目の服役中だ。
30代で初めて逮捕され、40代でも再び罪を犯したAさん。
その理由をこう語った。
覚醒剤取締法違反で3回目の服役 Aさん
「自分の場合は離婚したことがきっかけで、孤独を感じてやってしまった。社会に出てどうしていくか、生活設計を立てるなり、家族のことを思いながら再犯しないように努力している」
美川キャスター
「ずっと遠くに行くことも不可能ではないが、誘惑は生じないんですか」
Aさん
「ないですね。担当さんには迷惑をかけられないので、担当さんの信頼を取りながら、そういうことをしないように日々努めている」
身近にいる刑務官や、遠くにいる家族。
罰ではなく誰かを裏切りたくないという思いが、更生を支えるのかもしれない。
再犯を防ぐために過渡期を迎える刑務所。
鹿児島刑務所・山内博文所長
「刑務所にいる間は一生懸命、受刑者に対してできることがある。ただ、受刑者が出所する日は来る。犯罪被害者を増やさないためには、再犯を犯して欲しくないという気持ちを持ち、教育的要素も含めた取り組みを続けなければいけない。『再犯を犯していけないんだよ』という、気持ちの種をまいていく作業を忘れずに続けていくことが大事なことかなと思う」
美川キャスター
「刑法が変わり過渡期を迎えている刑務所のあり方。一人でも被害者を増やさないために、罪を償うとは何なのか、模索が続けられています」