多くの鹿児島の文化人が集った天文館の飲食店「かねじょう」。惜しまれながら2015年に閉店した、この店が一夜限りの復活を果たした。今月亡くなった店主を偲び、店主の子供たちと店を愛した関係者よって実現したのだ。この復活に密着し、関係者の思いに迫りました。
デジャヴ食堂~かねじょう~
【かねじょう】
以前、天文館の七味小路に「かねじょう」という店がありました。
昼は女性たちが中国茶や飲茶を楽しみ、夜になると舞台や 音楽・美術を志す若者から、広告やマスコミに関わる人生の先輩たちまでが集まり夜通し語り合っているお店でした。
30年に渡り営業し、惜しまれながら2015年に閉店した、このお店が7月26日に一夜限り再現されました。
【上松伸彦さん】
かねじょうの店主、上松伸彦さんは今月亡くなりました。
残された上松さんの2人の子どもが今回の再現を企画し、それに賛同した歴代のスタッフや常連客が手伝い、この夜が出来上がることになったのです。
料理の仕込みや会場の設営は前日から始まりました。「かねじょう」を愛してくれたお客さんたちのために馴染みのメニューを再現していきます。
娘のりかさんは天文館のキャパルボで会場の設営を始めていました。準備も概ね整い、お客さんたち続々とが集まってきました。
【息子の晃大さん】
息子の晃大さんは東京で調理師をしています。今回、再現された料理は10品。往年の「かねじょう」メニューに加えて、息子の晃大さん特製のクリームチーズとわさび漬けのカナッペなどが提供され、この夜に花を添えました。
【再現の宴】
そして、いよいよ一夜限りの「かねじょう」再現の宴がスタート!
次々と訪れる世代を超えた常連客たちが再会を喜んだり、懐かしい料理とお酒に舌鼓を打つ風景がそこかしこに広がりました。30年という長きに渡る営業をした店ならではの、幅広い客層が同じ店を愛した仲間として集っていました。
店の常連客でもあり、鹿児島から全国デビューしたアコースティックユニット「ヴィジョンクエスタ」のメンバーでもあった有村航平さんによるチェロの演奏で宴が始まりました。
多くのお客さんたちが思い出を語り始めます。この日集まったお客さんは200名を超え、皆がそれぞれに自らの「青春」を懐かしんでいました。
【ステージ】
アーティストを志すお客が多く集まる店であったことを象徴するように、次々とステージを彩るダンサーやミュージシャンたちは皆この店で育ち、それぞれの舞台へ旅立っていった者たちなのです。
夢を語り合った時代を慈しむように、いつまでもステージが空くことはありませんでした。