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ニュース・スポーツ

湯の町の”温泉文化”を守れ 鹿児島・指宿市の「温泉配湯」がピンチ 施設の老朽化や後継者不足

2025年8月27日(水) 12:55

砂むし温泉で知られる鹿児島県指宿市には観光客だけでなく、住民も温泉を身近に感じるサービスがあります。

湯の街ならではの「温泉配湯」と呼ばれるもので、水道と同じように家庭のお風呂に温泉を引ける仕組みなんですが、今、岐路に立たされています。

古くから親しまれる温泉配湯の現状を取材しました。

波の音に癒やされながら砂むし温泉を楽しむ観光客。

神奈川県からの観光客
「気持ちがいい。(砂の)重みがずっしりくる」

湯の街、指宿の名物です。これを目当てに年間約25万人の観光客が国内外から訪れます。

温泉の恩恵を受ける指宿市。実は観光施設にとどまらず、市民もごく身近に温泉が楽しめます。

取材した家の蛇口から出ているのは温泉です。指宿の暮らしに溶け込む「温泉配湯」というサービスを利用しています。

泉源からポンプで組み上げた温泉をタンクに貯め、水道と同じように配管を通じて家庭に供給する仕組みです。

街にはこの配湯に使う市営のタンクや民間事業者のタンクが点在しています。

市内の古民家に住む長山智寛さんは、2023年神奈川から地域おこし協力隊として指宿にやってきました。

指宿市地域おこし協力隊・長山智寛さん
「(指宿市の)一番の魅力は温泉だった」

家で温泉に入れることに魅力を感じ、指宿に移住する人も少なくないそうです。

長山さん
「気持ちいい。ほとんどの人が体験したことのない生活になるので、すごく来てよかったと思う」

まさに湯の街ならではの文化。

指宿市の市誌を開くと、その始まりは戦前の1937年、昭和12年とあります。

その後、高度経済成長と共に民間事業者も相次いで参入。市誌が編纂された1985年当時は市内の3分の1、約3800世帯で温泉を楽しんでいたそうです。

ところが長年、市民に親しまれている配湯は今、岐路に立たされています。

原因の一つが施設の老朽化です。

毎日行われる配管の点検作業に同行させてもらいました。

点検員 和田信明さん
「お湯が止まったら大変。ホテルや一般家庭に行かないので、お湯自体に塩分があるので腐食する。それでモーターをやられる」

指宿の温泉は塩湯。このため通常よりも配管の腐食が早いといいます。

さらに設備を劣化させるのが配管を詰まらせる物質。

温泉の成分が固形化したいわゆる「湯の華」です。

本来の配管の断面の半分以上がふさがっています。

温泉を扱うが故に発生する設備の清掃や更新。その費用は年々、増加しているそうです。

それに追い打ちをかけるのが人口減少による利用者の低迷です。

1985年は約3800世帯だった利用数は2014年度には2700世帯、そして2024年度は1700世帯に。

利用者の減少に伴い、収入は減るもののメンテナンスに関わる費用は増加。

この状況を受け、指宿市が運営する配湯は2025年4月、使用料の値上げに踏み切りました。

一般家庭は20%の値上げ、月の基本料金は3500円から4200円となりました。

指宿市水道課 安留和信課長
「皆さんに負担をしてもらうのは心苦しいが、温泉配湯の維持に必要な経費と理解してもらった」

厳しい運営状況は民間も同じです。

指宿市温泉配湯業組合・新宮領組合長
「温泉配湯をもう辞めたい。辞める選択肢の方が強い。この8年間で5業者が廃業した。現実的に」

指宿市温泉配湯業組合によりますと、最盛期には30業者近くいた組合員も今は3分の1ほどに。

経営悪化に加え、民間事業者が直面するのが高齢化による後継者不足です。

そんな窮地に陥る温泉文化を守ろうと、2024年1月から配湯事業に乗り出した人がいます。

指宿市で水道業を営む大坪泰史さんです。

半世紀以上、配湯を続けてきた先代から相談を受け「事業承継」という形でバトンを受け取りました。

大坪泰史さん
「温泉配湯がなくなると大変な事だと思い、妻にも相談したが「やってみよう」と決意した」

大坪さんは本業の傍ら約130世帯に温泉を送り続けています。

大坪さん
「24時間止まることがないようにメンテナンスをする作業になる。(設備を)見に毎日来ている。2、3日に1回、塩を取っている」

トラブルが起きないようこまめな点検が欠かせない仕事ですが、大坪さんの決断は長年の利用者を喜ばせました。

利用者
「『このままどうなるのかな』という不安、心配はあった。その点では安心してホッとした」

大坪さん
「『温泉をありがとう』『助かる』とよく言われる。それが一番の喜び。指宿市の財産なので、できる限り皆さんに温泉に入ってほしい」

湯の街、指宿に根付く温泉配湯という文化。

岐路に立つその灯を絶やすまいと影で支える人たちの姿がそこにありました。

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