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ニュース・スポーツ

「91歳 現役」鹿児島の老舗たこ焼き店「たこ焼き本町」 昭和の味を守り続ける理由

2026年4月15日(水) 11:00

91歳現役のたこ焼き屋店主・木佐貫シズエさん

鹿児島県鹿屋市に、昭和の空気をそのまま閉じ込めたようなたこ焼き店がある。店名は「たこ焼き本町」。毎朝9時半ごろから窓際に立ち、黙々とたこ焼きを焼き続けるのは、昭和10年生まれ、91歳の店主・木佐貫シズエさんだ。60年以上変わらない素朴な味と、その背後に積み重なった人生の物語が、今日も地域の人々を引き寄せている。

正面の大きなタコが目印、昭和レトロな空間

鹿屋市のたこ焼き店『たこ焼き本町』

店の正面には大きなタコのイラストが描かれ、一目でたこ焼き屋とわかる外観が目を引く。店内には鹿屋市出身の芸能人のサインも飾られており、地域に根づいた老舗ならではの趣がある。昭和で時が止まったかのような空間の中で、シズエさんは今日も慣れた手つきでたこ焼きを焼いている。

インタビュー中に注文の電話が鳴ると、スッと立ち上がり小走りで電話へ駆け寄る。その軽やかなフットワークは、とても91歳とは思えない。長時間の立ち仕事もまったく苦にしないというシズエさんは、こう話す。
「つらいってことはないよ。楽しい仕事だから」

外はパリッ、中はトロッ――創業当初から変わらない味

創業当時を語るシズエさん

シズエさんのたこ焼きは、外はパリッと、中はトロッとした食感が特徴だ。甘めのソースと青のりが絡み合い、創業当初から変わらない素朴な味わいが口いっぱいに広がる。

価格は15個500円。
ただし、この価格だけは「昭和のまま」とはいかなかった。

「たこ焼きは1ケースで100円だったの、最初は。15個で100円だよ。その頃のメリケン粉は68円か98円かだった。今は300円からだよ」

材料費の高騰を正直な言葉で語るシズエさんの口ぶりには、長年商売を続けてきた人ならではの実感がにじんでいる。

始まりは散髪屋の隣――夫婦二人三脚で歩んだ60年

長光さんとシズエさん

シズエさんが店を始めたのは、今から60年以上前、まだ20代のころだった。当時、夫の長光さんは理容店を営んでいた。そこへ父の友人が「たこ焼き屋をさせてごらん」と声をかけたのが、すべての始まりだという。

「散髪屋を壁で仕切って、そっちが私で、お父さんがこっちで。たこ焼きが一人で大変だったから『もうこっちをしてよ、閉めるが』って言った。『じゃらいね』って言って散髪屋をすぐ閉めてくれた」

こうして夫婦二人でたこ焼き一本に絞り、長い年月をともに歩んできた。シズエさんが「お父さん」と呼ぶ長光さんは、「人見知りするような人。しゃべらないでニコニコ笑うだけ」という穏やかな人物だったという。その長光さんが2025年5月に亡くなった。

夫を亡くしても、店に立ち続ける理由

たこ焼き本町のお客さんの声

長光さんが亡くなっても、シズエさんに店を辞めるという選択肢はなかった。その理由はシンプルだ。

「お客さんがしゃべってくれるだけでもうれしい。それだけで楽しい」

店を訪れた客も、シズエさんの姿に刺激を受けている。「年齢を聞いてびっくりしました。見習わなきゃと思いますよね」と話す客もおり、たこ焼きの味だけでなく、シズエさんそのものが「たこ焼き本町」の魅力となっている。

店には後継者もおり、午後5時からは息子さんが「夜の部」として営業を引き継いでいる。大きなタコの絵の下で、シズエさんは今日もたこ焼きを焼いている。

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