「ここまで大きくなるとは」 鹿児島の茶葉が2年連続日本一、抹茶ブームで価格は前年比2倍超に
2026年6月26日(金) 16:20
カナダから「毎朝ミルクで割って飲む」 広がる抹茶需要

池田 研太 社長
この日、カナダからやってきた夫婦の姿があった。鹿児島を訪れた目的の一つがお茶だという。「毎朝ミルクで割って、抹茶を飲むの」「抹茶をそのまま飲むことが好きで、自然な茶葉の味を楽しみたい」――現地でしか味わえない体験を求めて、海外からの来訪者が茶の産地を直接訪れる光景は、もはや珍しくなくなっている。
2020年に県内で先駆けて抹茶の加工工場を整備した池田製茶でも、現在は毎日フル稼働の状態が続いている。池田研太社長は抹茶ブームの広がりを肌で感じながらも、その規模に驚きを隠せない。
「ここまで大きくなるとは思っていなかった。そうなればいいなと思っていたのが来た感じ。まだスタートの段階かと思う」
そのうえで「鹿児島のお茶の魅力を知ってもらえれば、どんどん広がりを見せていくのではないか」と、さらなる拡大に期待を寄せる。
「相対的に煎茶の需給が引き締まる」 価格高騰の構造

県内の一番茶の取引価格の推移
てん茶の存在感が増す一方で、煎茶を取り巻く状況は複雑だ。県内のお茶全体の生産量が横ばい・微増で推移するなか、てん茶の割合が増えれば、必然的に煎茶の量は減少する。
農林中金総合研究所の山本裕二研究員はこの構造をこう分析する。「国内の消費者が抹茶の消費を多く増やしたとは聞いていない。国内のインバウンド向け需要、輸出向けに伸びている。煎茶からてん茶への転換が起きているので、相対的に煎茶の需給が引き締まる状況が長く続く」。
実際、数字にもはっきりと表れている。県内の一番茶の取引価格を見ると、2026年は1キログラムあたりの平均価格が5228円となり、2025年の2倍以上に急騰した。ここ数年でも価格の伸びは著しく、2年前と比べると3〜4倍の水準になったとする声もある。
煎茶はペットボトル飲料にも広く使われており、このまま高騰が続けば、身近なお茶の値段に反映される可能性もある。消費者にとっても無縁ではない問題だ。
大阪の飲料メーカーが鹿児島で自ら茶畑を

ペットボトル飲料
価格高騰と供給不足という構造変化のなかで、新たな動きも生まれている。南九州市知覧町の茶畑で栽培を行っているのは、大阪に本社を置く飲料メーカー・ライフドリンクカンパニーのグループ会社、LDアグリだ。
同社はイオンのプライベートブランドなどを含め、年間10億本のペットボトル飲料を生産している。もともと40年ほど前から南九州市で茶葉を仕入れてきたが、煎茶の需要が供給を上回る状況を受け、2026年4月から茶畑を借りて自社での原料生産に踏み切った。地元の農家の協力を得ながら進めている取り組みだ。
浅井祥平社長は現状の価格水準についてこう述べる。「2年前からすると一番茶でだいたい3〜4倍の価格になっている。我々が受け皿になることで少しでも貢献できる」。
製造工程では蒸し時間の微調整が重要だといい、「非常に重要な工程」と浅井社長は強調する。県外からの参入でありながら、地域の農業と連携しながら安定供給を目指す姿勢は、産地にとっても一定の意味を持ちうる。
「急須で飲む文化からペットボトルでドリンクとして飲む風潮が広がっていると思うが、それでも変わらずお茶は日本人の強いアイデンティティーを持ったドリンク。そういう意味では非常に重要な位置づけの場所」と浅井社長は語り、鹿児島の茶産地に大きな可能性を見いだしている。
「お茶王国」鹿児島が直面する新たな課題

てん茶
2年連続で荒茶の生産量日本一となり、名実ともに「お茶王国」となりつつある鹿児島県。しかし、その内実は大きく変化しつつある。世界的な抹茶ブームがてん茶への転換を促し、煎茶の需給を引き締め、価格の急騰を生み出すという連鎖が起きている。インバウンド需要と輸出向け需要の拡大が産地を潤す一方で、ペットボトル飲料などを通じた身近な消費への影響も無視できない。
生産者、加工業者、そして県外から参入する企業まで、それぞれの立場で国内外の需要を見極めながら、安定的な供給に向けた模索が続いている。鹿児島のお茶が世界から注目を集めるいま、産地はその変化の波に乗りながら、次のステージへの道を探っている。




















































































































