ウイスキー製造免許持つ酒蔵は鹿児島が日本最多! 焼酎王国のウイスキー最新事情に迫る
2025年10月17日(金) 09:00

マルス津貫蒸溜所(鹿児島・南さつま市)
鹿児島といえば焼酎王国として知られるが、実はウイスキーの製造免許を取得している酒蔵の数日本一は鹿児島である。南国ならではの味わいがするという鹿児島のウイスキー、焼酎造りとの共通点もあり新規参入の蔵元もある。
鹿児島ウイスキーの歴史を作った蒸留所

本坊和人社長
ウイスキーの熟成樽が約2000本もずらりと並ぶ圧巻の光景。ここは鹿児島・南さつま市にある本坊酒造の「マルス津貫蒸溜所」だ。一年を通してウイスキーが生産されている。
原料となる麦芽はほとんどがヨーロッパから輸入され、それを粉砕し仕込み水を加えると麦汁になる。次に麦汁に酵母を入れて発酵させ、もろみをつくる。「丸4日間、96時間発酵させるが、いかにいろんな香味成分を作るかが大事」とマルスウイスキーの草野辰朗さんは語る。
そしてウイスキーづくりには欠かせない蒸留。ポットスチルという独特の形をした蒸留釜でもろみを蒸留し、できた原酒を樽に入れ、最低3年の熟成期間を経る。「各樽で熟成のピークがあるので、それを見極めて、しかるべき樽をしかるべきタイミングで使えるよう努力をしている」と草野さんは言う。
鹿児島のウイスキー作りの歴史は本坊酒造から始まった。終戦後の1949年、本坊酒造はウイスキーの製造免許を取得。その理由について本坊和人社長は「全国の市場の動きのなかで、これからは和酒だけでなく洋酒の市場も活発化するだろう」と説明する。
その後、生産拠点は山梨、長野に移り、鹿児島県内での製造は1984年に途絶えたが、2016年に津貫蒸溜所が開設され、鹿児島でのウイスキー造りが復活したのだ。
「鹿児島のウイスキーは濃厚でリッチな味わい」
温暖な気候の鹿児島で作られるウイスキーにはどんな特徴があるのか。鹿児島市内でバーを経営し鹿児島のウイスキー事情に詳しい小原紀幸さんはこう話す。
「鹿児島は南国で気候が暖かいので早く熟成しやすい。ウイスキーは個性なので南は南のウイスキーの味わいになる。若い原酒でも濃厚なリッチな味わいになるのが特徴」
実際に津貫で製造されたウイスキーは「非常にフルーティ」と評され、「南国のフルーツを連想させるような香り、味わい」をイメージしたという。