火星の衛星「フォボス」から砂を持ち帰る JAXAが10月20日に挑む"世界初ミッション"の全貌
2026年10月16日(金) 16:30
サンプルが解き明かす「2つの謎」

火星とフォボスの模型
フォボスから持ち帰るサンプルを分析することで、主に2つの大きな謎が解明できると期待されている。
ひとつ目は、フォボスの「起源」だ。これまで、フォボスの誕生については2つの説が唱えられてきた。外から飛来した小惑星が火星の重力に引き寄せられてそのまま周回するようになった「捕獲説」と、火星に天体が衝突した際に飛び散った破片が集まってできた「巨大衝突説」である。サンプルの成分を詳しく調べることで、どちらの説が正しいかを特定できると見られている。
ふたつ目は、「かつての火星表面の環境」だ。フォボスの表面に含まれる火星由来の物質を解析すれば、火星にかつてどのような環境が広がっていたのか、その手がかりを得ることができる。生命が存在し得る環境だったのかどうか――。その答えに迫る可能性も秘めている。
「風船を落としたときに跳ねる」――着陸技術の壁

着陸時に転倒しにくい構造を実現した
ミッション実現に向けて技術者たちが最も頭を悩ませた課題のひとつが、フォボスへの「着陸」だった。
重力の小さいフォボスでは、探査機が表面に触れた瞬間に跳ね返りやすく、転倒するリスクもある。川勝マネージャはその難しさをこう表現した。「フォボスの場合(場所にもよるが)、地球の2000分の1ぐらいの重力しかないので、風船を落とした時に、跳ねて向きが色々変わってしまいますよね。あれに近い状態。どういうような状態で着陸ができるか、数値シミュレーションについてもすごい研究と工夫をした」。
この難題に対し、技術者たちが編み出した解決策が、着陸脚を大きく広げて重心を低くするという設計だ。さらに着陸時には緩衝材を潰すことで衝撃を吸収し、転倒しにくい構造を実現した。細部の一つひとつに、技術者たちの知恵と情熱が注ぎ込まれている。
世界が認めた日本の技術――NASAも協力するプロジェクト

はやぶさ2が持ち帰ったサンプル
MMXプロジェクトには、アメリカのNASAをはじめとする4つの欧米宇宙機関が協力し、探査機に搭載する機器の提供なども行っている。なぜ世界の宇宙機関が日本のプロジェクトに参加するのか。その背景には、JAXAが「はやぶさ2」で確立した実績がある。
川勝マネージャは自信を持ってこう語る。「はやぶさ2で『サンプルリターン』という技術を確立したことが、この種のミッションに対する世界で最も信頼できるパートナーだと思ってもらえていると思う」。
かつては「挑戦の域を超えている」と思われていたフォボスのサンプルリターンが、今や国際的な共同プロジェクトとして動いている。その変化を川勝マネージャはこう振り返った。「『挑戦』と『無謀』は紙一重だと思う。10年前の我々が『フォボスのサンプルリターンをやろうと思っているから一緒にやらないか』と言っても、多分、挑戦の域を超えている」。はやぶさのサンプル採取が成功し、各国がその技術力を認めたことが、MMXへの扉を開いたのだ。
















































































































