鹿児島の伝統的工芸品「本場大島紬」。衰退しつつある業界を盛り上げようと、職人たちが立ち上がった。来年の大河ドラマの主人公「西郷隆盛」にちなんだ新しい柄を作るプロジェクトを始動。今回は続編！作業はいよいよ奄美での泥染めに入ってました。新しいことに挑戦する職人たちの姿から大切なものを見つめました。

大島紬・新しい西郷柄への挑戦～いよいよ泥染めへ！

【平成西郷星プロジェクト】
薩摩の偉人「西郷隆盛」にちなんだ新し柄作りへの挑戦が始まっています。プロジェクトが立ち上がったのは約半年前。来年放送の大河ドラマ「西郷どん」を起爆剤に、衰退の一途をたどる大島紬の業界をなんとかしたいと、再生を賭けたプロジェクトです。

集まったのは、大島紬伝統工芸たち。プロデューサーには西郷隆盛のひ孫西郷孝夫さんも加わりました。決まった新しい柄の名前は「平成西郷星」。名前の由来となったのは、ロマンあふれる逸話
が元です。” 西郷さんが亡くなった年、火星が地球に大接近し夜空に大きく輝き。当時火星の存在を知らない人々は、あまりに大きな星をみて「あの星は西郷星」と口々に言ったそうです。”　見たことのない大きな輝き、この「西郷星」への思いがデザインとなり、図案にはキラキラ輝く星が描かれました。

　
【大島紬の工程】
７月。厳しい暑さの中、図案を元に実際に作っていく作業が行われていました。大島紬の工程は大きく分けて５つ。図案→絣締（かすりしめ）→染色→加工→織り。図案が出来た後は、絣締（かすりしめ）という作業に移っていきます。これは糸を染める前の準備作業です。紬のベースとなる絹糸を木綿の糸で締めていきます。少し黄みがかった部分は糸がしめられた部分。染めても色がつきません。逆に、白っぽい部分は締められていないので、染めたときに色が付きます。こうして分けていくことで、柄の元となる糸が出来ていきます。

　
【大島紬締機(しめはた)センター】
１９６０年。職人達が絣しめなどを行う作業場として、「大島紬締機センター」が作られました。昔は活気に満ちあふれていたそうですが、時代とともに衰退し、締め機の数も、職人の数も減りました。そんな現状をなんとかしたいと、この平成西郷星に思いを込めています。バトンは、いよいよ奄美の職人へと渡ります。

　
【泥染め】
大きな窯でテーチ木を煮出し作られる染料。これで糸を染めていきます。テーチ木で染めた後は泥の田んぼ、泥田へ移します。これを１時間くらい続けます。これが終わると工房へ帰って泥を落として、またテーチ木染めると言う工程を７、８０回繰り返していきます。全てが手作業。手間と時間をかけ、丁寧に染めていきます。

　
【平成西郷星】
今回の平成西郷星は、かなり難しいそうです。輝く星を表現した複雑なデザインのため、優しく丁寧に染めないと、糸がダメになってしまうといいます。失敗も隣り合わせの中、それでも何故、このプロジェクトに携わるのか？そこには、奄美の人たちの「西郷さん」への特別な思いがありました。維新前の一時期、西郷さんは奄美大島で暮らしていました。周りの人を思い、苦しむ病人や老人に自分の米を分けるなど、その優しい人柄から島民達に慕われていたそうです。
西郷さんを思い続けた奄美の人たちは、やがて「西郷柄」と呼ばれる大島紬を作りました。感謝の思いでした。

　
【大島紬に新しい風を！】
逆境に負けず、一歩を踏み出す職人たちの姿は、明治維新へとかけぬけた西郷さんと重なります。様々な思いを背負いながら、「平成西郷星」が大きく輝くその日を待ち続けます。
今、大島紬の業界は深刻な人手不足。苦しい現状を変えるためには、何か新しいことに挑戦、「一歩を踏み出す」ということが大切ということを教えてもらいました。
今後、加工や織る行程が進められていき、完成は今年の秋頃の予定。職人達の挑戦はまだまだ続きます。