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3月26日(火)鹿児島ゆかりの「南日本文学賞」。公開選考会に密着!

鹿児島にゆかりのある作家が目指す文学賞「南日本文学賞」。47回目の開催となった今回は、応募数が過去最多の127編となりました。作家の町田康らが参加して行われた公開選考会に潜入、受賞作品が決まる瞬間を取材しました。受賞作品も詳しく紹介します。

鹿児島ゆかりの「南日本文学賞」。公開選考会に密着!

南日本文学賞
南日本文学賞の公開選考会が先日開催され、今年度の受賞作品の発表が行われました。南日本文学賞とは、プロアマ問わず、鹿児島・宮崎在住もしくは出身者が、応募した作品の中から最も優秀な作品に贈られる賞です。今回は鹿児島県内外の10~80代、過去47回の歴史の中で最多の127編の応募がありました。この中から『小説・文芸評論部門』3編、『詩部門』3編が候補作品として選出。公開選考会では、3人の選考委員がそれぞれの意見を述べ、受賞作品をどの作品にするか討論を行います。
選考委員、1人目は芥川賞作家の又吉 栄喜さん。受賞作『豚の報い』や『漁師と歌姫』など多くの作品で知られる作家です。2人目も芥川賞作家の町田 康さん。最近では映画化された『パンク侍、斬られて候』の原作などでも話題となりました。そしてこの南日本文学賞を過去に受賞した、三角 みづ紀さん。2006年に『カナシヤル』で詩部門を受賞。その後も萩原 朔太郎賞を史上最年少で受賞するなど注目の作家です。
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『小説・文芸評論部門』候補作品 
一作品目は『貧しさのつめあと』。母の遺品整理の時、主人公は母宛ての一通のラブレターを発見する。父親ではない他の男性からのものだとわかり、手紙の送り主を探すことに。教育を充分に受けられなかったがゆえに、かなわなかった母の恋心が痛切に描かれています。『受給家族』は近未来が舞台の物語です。母と少年の暮らす貧しい家庭に時折あらわれる謎の『おっちゃん』。『おっちゃん』と会うことを快く思わない少年の母。自由とは何なのか。それぞれの生き方を描いた作品です。最後に『目ヌカレ』。奄美大島で育った2人の女性が主人公の物語。貧しい家庭で育った『那加』、裕福な家庭で育った『伊都』。差別するものとされるものの心情を民話を用いて伝えています。
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白熱する公開選考会 
選考委員3名の意見が一通り出揃いました。又吉さんと三角さんが『貧しさのつめあと』、町田さんが『目ヌカレ』を推す結果に。ここからバトルが繰り広げられます。審査員の意見は平行線、ここでわかりやすく○×△で評価をしあうことに。全員の評価が出そろい、 ここから受賞作品決定に向けて動き出しまた。
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受賞作品決定! 
二時間にも渡る選考の結果、今回の南日本文学賞『小説・文芸評論部門』受賞作品は『目ヌカレ』に決定しました。この『目ヌカレ』は、奄美大島を舞台とした物語。10年前におじいさんのお墓を訪れた時の経験をもとに作られました。物語の主人公は、2人の女性。奄美のマングローブで観光客をカヤックに乗せて案内する貧乏な家庭で育った『なか』と、『なか』の幼馴染でお嬢様のような裕福な家庭で育った『いと』。この二人が、数十年ぶりに偶然再会することから始まります。作品に奄美で実際に伝わる民話が用いられているのも南日本文学賞受賞の大きな要因となりました。
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そして詩部門では選考委員満場一致で『いでんこら』に決定しました。この作品は闘病中のお母さんを励ましたいという思いで作られたとの事でした。その一部をご紹介します。

 『いでんこら』
 あの日のほうれん草は
  どんなふうに皿に盛られていただろう
 お浸しだったか
 白和えだったか
 あら、違うわよ
 ぬただたじゃないの
 赤味噌白みそ黒酢に砂糖
 しっぽく台よりも鮮明に
 足元から黒ずんでいた台所

お母さんとのあたたかい情景が思い浮かぶ素敵な作品です。南日本文学賞公開選考会では、選考委員の書籍が販売されるほか、直接話を聞くことができるなど、文学ファンに嬉しい一日となりました。
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南日本文学賞受賞作品『目ヌカレ』『いでんこら』は3月26日の南日本新聞に掲載されているので、皆さんもぜひ読んでみてください。